やっぱり大切!買い物客の行動心理
皆さんこんにちは!今月のパルゼミは「店頭における生活者の購買行動」をテーマに進めていきたいと思います。ICT (Information & Communication Technology)の発展により様々なコミュニケーション手法が誕生した現代ですが、企業のプロモーション活動において店頭でのコミュニケーションが非常に重要な要素のひとつであることは今も昔も変わりません。その主な理由は今回の記事を読んでいただければ分かるのですが、先に答えを言ってしまうと「生活者がカテゴリー計画購買・ブランド変更・非計画購買している商品の割合が、全体の90%以上を占めているから」と言えるでしょう。『?』って思った読書の皆さん、今から順を追って説明していきますのでご安心ください!
商品の決定は店頭が9割?~計画購買と非計画購買~
では、初めに現在小売業において非常に重要視される2つの概念、「計画購買」と「非計画購買」についての理解を深めましょう。セールスプロモーションに携わる読者の皆さんにとっては馴染みの深い言葉かもしれませんが、本日はしっかりと基本的な部分から復習していきたいと思います。
さて、計画購買とは言葉の通り「そもそも購入を予定していた購買」の事を指します。反対に非計画購買とは「当初は購入を考えていなかった購買」の事です。一方、生活者には商品を「購入しない」という選択肢もありますので、そのような選択を考慮した上で生活者の店頭における購買行動の全てを分類すると、次の4パターンに分ける事が可能です。
計画購買
事前に購買の計画あり×実際に購入した
購買中止
事前に購買の計画あり×実際に購入した
非計画購買
事前に購買の計画なし×実際に購入した
非購買
事前に購買の計画なし×購入に至らなかった
上記した4パターンが店頭における生活者の購買活動の全てです。生活者は必ず「計画購買」「購買中止」「非計画購買」「非購買」のどれかに当てはまる購買行動を店頭にて行いますので、基本的な概念として理解しておきましょう。
さて、今回のパルゼミでは特に「計画購買」と「非計画購買」に焦点を当て理解を深めていきます。もちろん生活者が実際に購買に至らなかった(=「購買中止」と「非購買」の)原因を探求することも非常に大切ですが、その部分に関する解説までしてしまうと日が暮れてしまいますので、次回以降のテーマで取り上げたいと思います。そんな訳で、まずは計画購買に関してより深く見ていきましょう!
まず、一口に計画購買と言っても生活者が来店時にどのレベルまで購買の計画を立てていたかによって、さらに細かく計画購買を分類することができます。例えばある生活者が缶ビールを買いにスーパーマーケットを訪れたという状況を想像してみましょう。生活者Aは事前に「いつも飲んでる〇〇ブランドの××という商品を買おう!」と心に誓っているかもしれません。あるいは「こんな日は酔っ払わないとやってられない!とりあえずビールだ!!」と特定の商品をイメージすることなくビールという商品を買いに来たかもしれません。さらには「いつも飲んでる〇〇ブランドの××という商品を買おう!」と心に誓っていたにもかかわらず、「●●ブランドが新商品を出してる…」と浮気心に火を付けてしまった場合だってありえます。少し専門的な言葉を使ってまとめてみると、つまりは下記の通りです。
ブランド計画購買
来店前にブランドレベルで購買を計画し、店頭で計画通り購入する。
カテゴリー計画購買
来店前にカテゴリーレベルで購買を計画し、店頭でブランド・商品を選択し購入する
ブランド変更
来店前にブランドレベルで購買を計画し、店頭で同一カテゴリー他ブランドに購買を変更する
次に、同じように非計画購買の分類に関しても考えてみましょう。生活者Aはまたまたスーパーマーケットに訪れました。しかし今回はそもそもビールの購買予定はなく、晩ご飯のおかずを購入する為に来店したと仮定します。まず考えられるパターンは、店頭に設置されたビールのPOPなどを見ることで「そういえば冷蔵庫にビールのストック無かったな…」と思い出すことによりビールの購入をするパターン。さらには晩ご飯に生姜焼きを作ろうと買い物を進めていた際に、「生姜焼きにはやっぱりビールだよな~」と思い立って購入するパターン。その他にも割引やキャンペーンの告知を店頭で見つけたことによりビールを購入するパターン、新商品や珍しいビールを店頭で見つけたことによりビールを購入するパターンなどが考えられます。まとめると次の通りです。
想起購買
店内で思い出したことが起点となって購買する
関連購買
他の購買商品との関連性から必要性を認識して購買する
条件購買
値引きやキャンペーン参加などのインセンティブにより欲求が喚起されて購買する
衝動購買
新商品や珍しい商品を店内で発見し、試してみたいという新奇性や衝動により購買する
以上が計画購買・非計画購買のより細かな分類になりますが、ここで最も重要な事は、それぞれの購買が店頭にて下記のような割合で行われているという事実です。
こちらは流通経済研究所が1980年代より定期的におこなっている「計画・非計画購買調査」の結果です。スーパーマーケット(総合スーパー/食品スーパー)で2013年に実施した計画・非計画購買調査では、商品全体のおよそ80%が非計画購買されていることが分かります。加えて、カテゴリー計画購買やブランド変更など、生活者が実際に店頭で購買選択をしている商品割合は全体の90%以上を占めていることも分かります。
ちなみに1980年代の同調査でも同じような結果がでており、たとえ時代が変わったとしても、生活者の大半が店頭にて購入する商品の意思決定をしていることに変わりはないと言えるでしょう。
頭の中はこんな感じ!~生活者の非計画購買における意思決定プロセス~
さて、計画購買・非計画購買に関しての基本的な内容は理解できたと思いますので、次は生活者が実際にどのような心理的ステップを踏んで店頭にて購買活動をしているのか確認していきましょう。
マーケティングの世界には消費活動の仮説として「AIDMAの法則」というものがありますが、こと店頭での購買活動においては「今すぐ売上が伸びる!店頭プロモーション術」で紹介されています「AIDeCAの法則」がより則していると思います。まずは以下の図をご覧ください。
上記した図で「AIDeCAの法則」の概要は理解できるかと思いますが、例に倣って解説を加えたいと思います。生活者Aがスーパーマーケットに晩ご飯を買いに来た際、スイーツコーナーに設置されたトップボードを見つけました(=Attention)。Aはチョコレート・ケーキに目がありません。スイーツコーナーに近づいたAは新発売のチョコレート・ケーキを紹介するPOPを見つけます(=Interest)。なんとベルギー産の最高級チョコレートを使用した、これまでにない濃厚な口どけのチョコレート・ケーキだそうです。Aは商品を手に取り(=Desire)、パッケージを見て値段を確認します。「先日買ったチョコレート・ケーキは値段も安いがパサパサした触感であんまり美味しくなかったな…(=Compare)」と考え、少し高めの値段設定にもかかわらず納得して商品を買い物カゴに入れました(=Action)。
以上が「AIDeCAの法則」に当てはめた場合の生活者の購買心理です。このような購買心理プロセスに関しては他にも様々な仮説が提唱されていますが、店頭における基本的な購買行動パターンとして、まずは「AIDeCAの法則」をしっかりと抑えておけば十分に応用が利くと言えるでしょう。
まとめ
以上、今回のパルゼミでは「店頭における生活者の購買行動」に関して、基本的な知識を皆さんにお伝えできたかと思います。冒頭でも述べた通り、様々なコミュニケーション手法が確立された現代においても、店頭におけるコミュニケーションの大切さは変わりません。基本をしっかり押さえた上で、より優れた店頭コミュニケーションの企画立案を心掛けましょう。
ーーーーー★次回パルゼミまでの課題★ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
・実際に自分が買い物をした際に、購入した商品を「計画購買した商品」と「非計画購買した商品」に分類してみる
・非計画購買した商品に関して、自分がどうしてその商品を非計画購買してしまったのか考えノートにまとめる。
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参考文献
インストア・マーチャンダイジング 第2版 公益財団法人 流通経済研究所
今すぐ売上が伸びる!店頭プロモーション術 中沢 敦